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GameSynthでコミカルアニメ系の効果音を作ろう!(前編)
プロシージャルサウンドは、アニメーション効果音の作成にも効果的な手法です。
今回は、GameSynthの特殊なモジュールとAnimation Curveのインポート機能を使って、表現力豊かで且つ絵の動きと一致した、コミカルアニメ系の効果音を作っていきましょう。
キャラクターの動き
少年とウサギの動きは、かなり弾力があります。こういったバウンスを表現するのに、ピッチモジュレーションは有効な方法ですが、GameSynthには、Bubble、Sine Bank、Plucked Stringなど、バウンス特性を強調するのに役立つジェネレーターも複数用意されています。
ウサギのジャンプ- 「ビヨーン」と勢いよく自然に跳ねる音は、Plucked Stringモジュールが最適です。さらにEQ Filterで、音の鳴りを滑らかにしています(ジェネレーターの振幅エンベロープによって、フィルターのカットオフ値を変動させる仕組みです)。
- EnvelopeでPitch Shifterを変調させることで、ピッチをゆるやかに増加させています。
- Plucked String内のピッチと、Pitch Shifterの両方を、単一のMeta Parameterでコントロール。これにより、Meta Parameter値の異なる複数の効果音バリエーションを、ピッチを上げながらワンクリックで書き出せます。
- ウサギの動きを強調するため、Sine Bankのピッチを素早く上下させた、別の効果音パッチも作成しました。
パラメーターのランダム幅の代わりにMeta Parameterを使うと、「異なるMeta Parameter値による連番の複数の効果音バリエーション」をワンクリックで一挙に書き出しできるので、便利です。
少年の走り- ウサギのジャンプと音を区別するため、少年の走りには、Saw設定のOscillatorをジェネレーターとし、Bandpass filterをLFOでモジュレートすることで「ビヨン」とした音を生み出しています。
- さらにFootstepsモジュールとChorusを通したBubbleジェネレーターをミックスし、少年のステップの跳ね返り感を強調させています。
- 最後に、足音をよりユニークな音にするため、Impactモジュールによる木琴風の音も作りました(コミカルアニメでよく耳にする音ですが、少年が古井戸の上を走ろうとする別カットでもこの音を使用しています)。
ちなみに少年のまばたき音も、Sine BankとBubbleをピッチ変調させる同様の方法で作り出しています。
アニメーションカーブ
このコミカルアニメはUnityで作られているため、アニメーションカーブ(Unityでは.anim)を GameSynthにインポートしてAutomation Curveとして活用することもできます。
たとえば少年の走り(で使っているいくつかの)音は、映像の走りモーションと完全に一致させる必要があります。下の動画のように、.animファイルをインポートしてAutomation Curveを自動生成し、そのカーブを(布擦れ音を出している)Noise Bandsモジュールと繋げて、音を映像と同期させています。こういった連動の仕組みは、GameSynthのサウンドモジュールのメリットといえるでしょう。
GameSynthは、SpriteStudio、Live 2D、Spineのような2Dツール、Unity、GameMaker Studioのようなゲームミドルウェア、HoudiniやFBX対応の3Dグラフィックツール、モーションキャプチャであるBHVなどのアニメーションカーブを読み込めます。
- まず、Derivativesモジュールによって、カーブから速度を求めます。
- 次にRectifierで正の値とし、Mapperでコントロールカーブの適正幅へと補正します。
- Smoothモジュールは、シグナルからノイズを削除し、カーブを滑らかに変換します。
- 最後にDrifterモジュールで、微妙な揺らぎを与え、音にバリエーションを与えています(=つまり単純な音の繰り返しになるのを避けています)。
また、Crossingsモジュールと繋げることで、アニメーションカーブでイベントをトリガーすることが可能です。Crossingsモジュールは、コントロールが定義値を横切った際にトリガーを発する仕組みです(上から下へ、下から上へといった横切りの方向も設定できます)。ここではシグナルが0.1となった際にスプリング音を鳴らし、0.9以上となった際に足音を鳴らす設定にしています。
音を書き出したら、あとは音声をDAWのトラックにドロップするだけです。追加の加工作業もなく、アニメーションとシンクロした音となっているはずです。
プロシージャルサウンドではその都度音を生成するので、制作過程において映像側(アニメーションカーブ)の動きや長さで変更が生じても、 同じサウンドパッチをまた使えるというメリットがあります。つまりアニメーションカーブを再度取り込んだり、パラメーターを変更すれば新たにクリーンな音が作り出せるため、音の再録音や、既存の音の再加工をする必要がありません。すぐに完璧な音が作れます。
コミカルアニメの効果音を、プロシージャル手法で作るブログの前編はここまでです。次回の後編では、ウサギの笑い声や、アニメ的な衝突音の作り方ほか、アニメサウンド制作において便利なGameSynthの機能など、各種サウンドテクニックについて紹介していきます。お楽しみに!