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GameSynth 2022
2022/07/04

GameSynthでコミカルアニメ系の効果音を作ろう!(後編)

GameSynthパッチ制作 Accel Speller
執筆者 Nicolas Fournel

GameSynthを使って、コミカルアニメの効果音をプロシージャル的に作るブログの後編です。

動画ではウサギが笑うシーンがありますが、この笑い声ももちろんGameSynthで作っており、ユニークで動きによく合う声が演出されています。今回はその作り方も解説していきましょう。

まず、アニメをもう一度確認しましょう。

井戸に落ちる

コミカルアニメでは、よく物体やキャラクターが落下する音がコミカルな演出で使われます。音で言うと、「ヒュー(笛のような長い下降スイープ音)」と落ちた後、「ボイーン!(誇張ぎみの衝突音)」という音で表現されます。

笛のスイープ音
  • パッチのメインのラインとして、「Pulse設定のOscillator音を、ローパス設定のEQ Filterで音質を和らげる」という構成になっています。
  • 右側のラインでは、Noise音をバンドパス設定のEQ FilterTubeに通すことで、口笛を吹く時に吐き出される空気のような音をシミュレートしています。
  • OscillatorEQ FilterFrequency ShifterのピッチをEnvelopeでゆっくり変調させることで、音を下降させています。
  • 最後に、CabinetDelayでレゾナンス成分を加えることで、音をより有機的にしています。
 

また衝突音は、アニメではよく爆発、パンチ、銃声のような誇張した音で演出されます。「デーン」というクラシックなパーカッション音でも強調することができます。

衝突音
  • まずChirpと、Chorusを介したBlipをミックスして衝突の原音にしています。
  • その後、EQ (3 bands)で低域と中域を大きくしています。
  • ReverbSpectral Delayで音にテールを追加し、かつ高周波を抑えています。
  • 最後にClipperで、音圧を高めながら飽和効果を与えています。
  • また、コメディらしさを出すために「シンバル」パッチも作成されました。これは、短いNoise音が、共鳴を生成する3つのComb Filterを通過することで作成しています。

GameSynthで衝突系サウンドを生成する方法の1つとして、「フィルターを通して短いインパルスを送り、その素材特有の周波数を強調する」テクニックがあります。TubeComb Filterなどのレゾネーターベースのモジュールを追加すると、より複雑なサウンドになります。既存のImpactモジュールも便利です。


衝突の後、ウサギは愉快なシーンを目の当たりにし、ケラケラ笑います(コミカルアニメでありがちなパターンです)。

GameSynthには、キャラクターや動物の声をシミュレートするためのさまざまなモジュールを搭載しています。今回は、ベーシックなものを使用しています。

ウサギの笑い声
  • まずGlottis(声門)をFormant Filter に通して共鳴周波数を調整すると、ウサギのような小動物にぴったりの声の原音を作り出せます。
  • LFO(および独自のモジュレーター)で、笑い声の波を作ります。EnvelopeMapper、およびArithmeticモジュールを使用することで、「キャッキャッ↑キャキャキャ↓」と、リズムを増加させつつもピッチが減少する笑い声に変調しています。

また、森から井戸の底へトランジションする際の音は、Whoosh(風切り音)のスケッチパッドで線を描くだけで作成できます。 GameSynthは、Modularモデルだけでなく、非常に直感的なインターフェースを備えたシンセサイザーを他にも多数搭載しており、それらを使って効果音を素早く作ることができます。

少年のめまい

井戸の底に落ちてから木の板が落ちてくるまで、少年はめまいとともにフラフラと歩きます。

木の板の衝突
  • 「ヒュー」と板が落ちてくる音は、Sine BankRing Modulatorに通して共振を起こすことで作成しています。
  • 「スコーン」とした衝突音は、主に「パンチ音」と「カウベル音」の2パッチで演出しています。板がバケツや地面にぶつかる音は、ImpactModesといった音源とフィルターを使用して、さまざまな材質のぶつかり音を作成しています。
  • さらにModesモジュールのSurface入力と内部モジュレーションを使用して、「フラフラ~」としたコミカルな効果音を作っています。

めまい

「フラフラ…ピヨピヨ…」としためまい効果は、2つのパッチを作って重ね合わせています。

  • 1つ目のモジュールは、狭帯域のシンプルなNoise Bandsモジュールで、LFOで変調し、Chorusを介して送信されています。
  • 2つ目は、Bird設定にしたAnimalモジュールを、Pitch Shifterを使用してより高い周波数に到達させて、すばやくチャープ音を鳴らします。LFOPerlin Noiseの組み合わせにより、振幅とピッチに適用される高速でランダムなバリエーションを生成できます。

アイリスアウト

映像は、漫画などでよくある丸く閉じながら真っ暗になる2段階のトランジション(アイリスアウト)で終わります。

  • デチューンした2つのHornモジュールで、動きに合わせてピッチを下げています。
  • さらにPitch Shifterも加え、ピッチの右肩下がりを強めています。
  • 最後のFlangerはいくつかのモジュレーション効果を与え、音のドライ感を減らしています。
  • アイリスアウト効果の2つのステップに一致するように、ピッチと音の長さが異なる2つのバリエーション音を作成しました。

環境音

また、映像をより生き生きとさせるために、いくつかの環境音も追加しました。 比較的静かな音ですが、シーンに背景を与えています。

  • 森の雰囲気は、GameSynthリポ​​ジトリの「Autumnal Forest(秋の森)」パッチを使っています。Noise BandsLeavesモジュールで、風と葉の動きを出しています。
  • AnimalOscillatorモジュールを変調させることで、鳥のさえずりや虫の声をシミュレートしています。また、各Clockをわずかにランダム化して、ばらつきのある発音にしています。

井戸の底の洞窟のような環境音は、よりシンプルなパッチ構成です。

  • Noise Bandsをローパス設定のEQ Filterに通し、さらにPerlin Noiseによって、音が時間とともに若干ゆらぐようにしています。
  • Damping値の異なる左右のReverbで、小さなステレオ効果を与えています。

以下のボタンから、このチュートリアルで説明されているすべてのパッチをダウンロードできます。今回は主にアニメーションを対象としたチュートリアルでしたが、このスタイルのサウンドデザインは、多くのカジュアルで楽しいゲームの演出に活用できます。

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