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戦車バトルの効果音演出

GameSynth Enginesプラグイン最新バージョンより、新たに戦車エンジンモデルが登場しました。今回は、Modularモデルも使って砲塔や砲撃音なども加えつつ、戦車バトルシーンに必要なあらゆるサウンドを設計しましょう。
戦車のエンジン音
まずは戦車のエンジン音から設計します。
EnginesプラグインでArmored Tankモデルを選択し、エンジンタイプコンボボックスでTiger I(ティーガー1)モデルを選択します。Mixerパネルで、Pulse Loop 1を1.50、Order Compを2.40、Gear Noiseを 2.70に設定して音質を整え、Masterを-1.60に下げます。これで、運転する準備が整いました。
Enginesプラグインは、スケッチパッドに線を描くだけで、運転するようにアクセル・ブレーキをコントロールできます。映像制作において、音を車の動きにシンクロさせるのに便利でしょう。
何度か試行錯誤しながら、シーケンス全体のサウンドを1つのストロークで作成し、映像と完全に同期した音に仕上げました。
ストローク中にQ・Aキーを押すことで、ギアをシフトアップ・ダウンできます。
また、自動車をよじ登る、敵戦車を破壊して再び動き出す際など、エンジンの回転数を上げるアクセル踏み込みシーンがあります。このパートに迫力を持たせるため、同じ車両タイプを使用しつつも、断片的に踏み込んだサウンドパートも追加で作りました。
MixerパネルのパラメーターはTruck Noise(履帯)、Starter Noise(スターター)、Idling Noise(アイドリング)を0にし、Gear NoiseとPulse Loop 2は-15、Pulse Loop 1とOrder Compは4付近とすることで、シリンダー音にのみ重点を置いた音にしています。これをベースのエンジン音に上乗せする形で使うことにします。
上方向へと線を描くことで、アクセル踏み込み音を複数作りました。高いギアに切り替えると、より滑らかな加速音になります。
一瞬出てくる敵戦車ですが、これは別車種のエンジン音にしましょう。
エンジンタイプをT-34/85に変更し、Pulse Loop 2とGear Noiseを7に設定し、Track Noiseのレベルを -16に下げることで、音がぶつからないようにします。
スケッチパッドで、まずエンジンを2000RPMまで回転させてから、敵戦車の動きに合わせてゆっくりと減速させます。
Enginesプラグインを使えば、これだけで必要なエンジン音が用意できます! 次はModularモデルを使い、エンジン以外のサウンドを作っていきましょう。
砲塔の回転
まずは砲塔の回転音を作りましょう。
モーター部分は、Motorモジュールと、ピッチが変調されるSine Oscillatorの組み合わせで、さらにChorusを通しています。またGearモジュールで、別の機械コンポーネントも追加しつつ、その発音レートも変調します。
フィルター処理されたNoiseをSteamモジュールと組み合わせて回転運動を強調し、Clangモジュールがサウンドにインパクトを与えます。
また、動画内の2度目の砲塔の回転はもう少しゆっくり回るため、パラメーターを調整してややスローな回転音バリエーションも作りました。
Envelopeのアタックを滑らかにし、Clangモジュールを削除したため、サウンドの開始時の動きがソフトになりました。Motorのspeed、Oscillatorのpitch、およびGearのrateパラメーターも下げて、動きを遅くしています。また、サウンド全体のduration(時間)を 2秒から3秒にしています。
今回のように多くのジェネレーターやコントロールがある場合、個別にモジュールを調整してグローバルデュレーション(パッチ全体の音の長さ)を変えるのは面倒になりがちです。モジュールを複数選択したのち、コンテキストメニューのMatch durations(音の長さを一致)を押すと、複数モジュールのduration値を一度に書き換えられるので便利です。
戦車砲
戦車砲のショットでは、 3つのパッチを作りました。
機械的な「ガチャリ」
まずRemove Clip(マガジンの取り外し)に指定したGun Foleyモジュールで、金属感のあるトリガーサウンドを出します。パッチ左側では、NoiseモジュールをLMS Filterに通し、Gunshotモジュールをリファレンスとして使っています。そして同じGunshotのドライ信号とミックスし、砲撃の直前に起こる「バシュッ」とした噴射を表現しています。最終的に、2つのラインはComb Filterを通し、戦車砲の管の中で鳴っているような質感が加えられています。
爆発の「ドーン」
まず圧縮されたGunshotに、50 Hz付近のSine Oscillatorをミックスして低域の存在感をアップさせます。この音をベースに、EQ Filterで110Hz 付近の周波数をブーストします。そしてFlangerで音に少し変調を加え、Saturatorで音を過激にすることで、豪快な爆発音を表現しています。
高速の砲弾の風切り音「シュイン」
Noise Bandsと、ローパス設定のEQ Filterを通過するSteamモジュールが音源です。上流のEnvelopeによって、Noise BandsのpitchやEQ Filterのfrequencyを変調させることで、素早い風切り音のように仕上げています。Flangerモジュールで音に存在感を出し、Saturatorで音をシャープにし、Delayで音にリリース感を与えています。
その他瓦礫や環境音
砲撃の後で生まれる爆発や瓦礫などの音は、GameSynthリポジトリから必要なサウンドパッチを検索しながら、ニーズに合わせて調整していく形で表現しています。
たとえば爆発は、"Explosion"パッチを使い、動画内の爆発距離間に合わせてdistance(距離)メタパラメータを調節するだけで用意できます。
リポジトリには、フルカスタマイズ可能な1000以上のプロシージャルサウンドモデルが用意されています。「新しくサウンドモデルを作りたいが、どこから作り始めればいいか分からない」という場合は、欲しい音に近いwavファイルをウィンドウにドロップすると、その音に類似した8つの候補モデルが表示されます。パッチ設計のいい足がかりとなるでしょう。
瓦礫、破片系の音は、リポジトリの"Tree Impact"、"Metal Box Falling"、"Dumpster Impact"、"Meteor Impact"などのパッチを使用しています。過去のアクションブログでも、こういったタイプの効果音作りを幅広く取り上げているため、ヒントが得られるでしょう。
他の環境音についても、燃える車は"Fireplace"パッチ、煙は"Flowing Sand"パッチを使っています。シーケンス前半で戦車が乗用車の上を乗り上げるシーンは、"Thunder Sheet"と"Steel Tension"パッチでバリエーションをいくつか作り、ミックスしました。
以下より、使用した全てのパッチをダウンロードできます。