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GameSynthで魔法音をデザインしよう(前編)


GameSynthには、リアルな音からシンセ系の音まで、あらゆる音をデザインできる豊富なモジュール群が搭載されています。今回は呪文や呪いなど、魔法系の音作りに焦点を当て、ブログ2部構成で、便利なモジュールやテクニックを解説していきます。
前編ではまず「地水火風」などの魔法属性を決め、次にコントロール、バリエーション、ロジックと組むことで、本格的な魔法ジェネレーターを設計していきます。後編では、他のタイプの呪文も解説していきます。
まずは、全魔法パッチをまとめて見てみましょう。全てGameSynthで制作されています。
パッチ和訳(再生順):魔法の雷、火球、闇魔法、蘇生、魔法の煙、聖なるフレア、竜巻、カオス、変化、スパーク、水呪文、キラキラ、氷魔法、回復、泡
魔法属性
よくある魔法には、炎や水などの属性エネルギーを持ったものが多いでしょう。
GameSynthには、火、風、水、岩、電気系の音を手軽に作り出せる特殊なモジュールがあり、制作要件に合わせて大胆に音を調整できる、豊富な合成・制御パラメーターが備わっています。
典型的なファイアボールの呪文を考えてみましょう。
- まずcrackling tone(パチパチ音)を0に設定したFireモジュールから始めます。
- FireモジュールのAmplitude(振幅)、Intensity(強度)、flame(炎)を、(プリセットのExponential Attack-Releaseカーブを使った)Envelopeと繋げることで、音が「シューッ」と時間変化します。
- Fireを2つに分岐しミックスします。一方では元の音の70%のdepthのFlangerを通過させ、Input Highpassは1100Hz前後に設定します。これにより、元のサウンドを保持したまま、中~高周波数にモジュレーションが追加されます。
- 加えて、30~40HzのSine波Oscillatorを、Fireモジュールと同じ振幅のEnvelopeに繋げてミックスすることで、低音のサブベースレイヤーが炎音に加わり、魔法にパワーが生まれます。
- 最後に、Stereo出力に接続されたPannerモジュールを使用して左右の動きを与えます。
ほんの数モジュールで、パワフルな攻撃魔法を設計できました。
このパッチ構造は、他の属性魔法パッチのベースとして使えます。たとえば、FireモジュールをRainやGooモジュールに置き換えて水系魔法にしたり、Electricityモジュールに置き換えて電磁系魔法を生成したりも可能です。
ヒント:コンテキストメニュー(モジュール上で右クリック)のreplaceコマンドを使って、モジュールを同タイプの別モジュールにすばやく切り替えることができます。置換前後でモジュールが同様の入出力を持っている場合、隣接モジュールへの接続を切らずに置換できます。
バリエーションの作成
特にゲームでは、単調な音の繰り返しでは飽きてしまうため、火の玉なども「似てるけど違う」バリエーションを作る必要があります。
次に紹介する竜巻パッチのように、コントロール信号をより多く、かつ自由度を与えることで、多くのサウンドバリエーションを作成できます。
- WindモジュールとNoise Bandsモジュールを使用。前者はWind Speed(風速)とFluctuation(変動)が大きく、さらにほぼすべてのパラメーターでランダム範囲を設けています。後者はLowest Pitch(最低ピッチ)とBandwidth Scale(帯域幅スケール)にランダム幅を持たせ、「ヒュー」と鳴るランダムな風音を出しています。
- Pitchが変調されたSine波LFOは、パッチの全体的な振幅および、2つのEQ FilterのCut Off値を制御します。
- 信号が Mapper、Scale Offset、Arithmeticモジュールを通過するとき、それらのパラメーターに割り当てられた小さなランダム範囲によって、バリエーションの幅がさらに広がります。
- さらに2つのEnvelopeモジュールのVariation 値をわずかに増やすと、パッチがトリガーされるたびに生成されるサウンドが変化します。
- チェーンの最後で、EQ FilterのQ値とDelayパラメーターにランダム範囲を設けることで、パッチのトーンと音の左右バランスにもバリエーションが生まれます。
呪文の詠唱
最後に、いくつかの簡単なロジックを追加することで、より精巧な呪文を設計しましょう。たとえば魔法の発動前にエネルギーチャージを追加するといったことができます。
- パッチ左側では、Granular NoiseモジュールとNoise Bandsモジュールを組み合わせて、パワーチャージ音を作成しています。後者はよりAmplitude Fluctuation(振幅の変動)を大きく設定しています。
- パッチ右では、Thunderモジュール、60HzのSine波Oscillator、およびClockによって定期的にトリガーされるBlipモジュールによって、電気の放電音が生み出されます。
- WavefolderとSpectral Delayエフェクトで、サウンドをより大きく、より有機的に変えています。
- 上流のEnvelopeは充電部の振幅を制御し、振幅値が0.9を超えると、Crossingsモジュールを介してパッチ右側の放電セクションをトリガーします。したがって、EnvelopeのDuration(時間)を変更すると、放電のタイミングが自動的に変更されます。
今回は、属性系魔法に焦点を当てました。これらの基本をふまえ、ブログ後編では別のタイプの呪文を設計していきましょう。