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GameSynthで様々な素材の音を作ろう
金属、木、石、ガラスなどの材質の音は、単純な衝撃、摩擦、破片から、複雑なメカニズムの一部まで、様々なゲームシーンで使われています。
GameSynthのプロシージャルオーディオエンジンを使えば、必要なバリエーションやインタラクションを含む、これらすべてのタイプのサウンドを作成できます。
架空のマテリアルや、録音が難しい巨大なオブジェクト、といった音を作成するのにも、プロシージャルサウンドは非常に便利な手法です。
金属、ガラス、木材
GameSynthで金属、ガラス、木材などの共鳴マテリアルをシミュレートする方法はいくつかありますが、最も基本的なレベルでは、それらはすべて共鳴モードを一緒にミックスする必要があります。
たとえばImpactモデルには、下の動画のように、特定タイプの新しい材質音を作成する便利なプリセットボタンが備わっており(必要なすべての共鳴モードを含む)、木、金属、プラスチックなどに固有の周波数モードをランダム生成します(これらのモードを利用しつつSurface設定を行うと、画面右側で摩擦音も作成できます)。
またImpactモデルでは、手持ちの打撃音をドロップし、分析して共鳴成分を抽出することもできます(詳しくはこちらのブログ)。これはさまざまな物体のモード分布を理解するのに最適な方法です。サウンドライブラリからお気に入りのサンプルをドロップして、結果を観察してみるといいでしょう。
一方でModularモデル(ノードベースで音を作るモデル)でも、Modesモジュール使うことでImpactモデルを再現できます。さらに他のジェネレーター、コントローラー、プロセッサーモジュールを複数組み合わせれば、音作りを拡張できる利点もあります。
最も一般的なマテリアル音を作成するためのModesパラメーターは以下の通りです。
木
モード数4~10
ピッチ100~300 Hz、スプレッド200~450 Hz
ダンピング3~5
金属
モード数6~10
ピッチ10~1000 Hz、スプレッド1000 Hz
ダンピング2以下
ガラス
モード数1~4
ピッチ2500 Hz以上、スプレッド1000 Hz
ダンピング1以下
なおModularモデルで摩擦音を作る際、FrictionモジュールにはMetal、Glass、Woodなどの便利なMaterialプリセットも備わっています。
また金属的サウンドの場合、GearやClangといったモジュールも使うと、特定タイプのぶつかりをシミュレートできるため便利です。
プラスチック
プラスチックがぶつかる共鳴音は、前述のようなImpactモデルやModesモジュールで作成できます。ただしこの方法は、コンテナなどのあまり硬くないオブジェに向いています。
- このような場合、Pitchは比較的低く、Dampingは高くするとよい結果になるでしょう。
- Modulationを低速で加えると、プラスチックの弾性をシミュレートできます。
硬めのプラスチックを作る場合は、Moduleモデルを使います。
- Impactモジュールを使うと、プラスチックの硬いぶつかりを表現できます(Mode frequencyの設定は低めにするといいでしょう)。
- Comb Filterを使い、Dampingを400~1000Hzに設定することで、パイプ形状のような共鳴効果も簡単に表現できます。
岩
岩や瓦礫音は、さまざまなサイズの石を混合できるRocksモジュールを使用します。砂利のようなサウンドにしたい場合は、Granular Noiseモジュールと組み合わせるといいでしょう。
岩の衝突音は、複数のモジュールを組み合わせて表現できます。
- ImpactとChirpは、ぶつかる瞬間のトランジェントを構築するのに最適です。
- Granular Noiseの振幅をEnvelopeで短く減少させたり、Durationを短くしたRockモジュールを使うと、「パラパラ…」としたテールをうまく表現できます。
金属、ガラス、木と同様、岩の摩擦音を作りたい場合は、FrictionモジュールでMaterial設定をRockにすれば作れます。
セラミック
セラミックは、石とガラスの中間のような音です。岩らしい重みや強さを持ちつつ、ガラス共鳴の一部を含む音となります(つまりピッチはガラスに似ていますが、音がすぐに減衰します)。
- Impactモジュールを選び、必要に応じて、Mode frequencyが異なる別のImpactを組み合わせます(例:「ゴツン」とした衝突音を出すImpactと「キン」とした共鳴音を出すImpact)。
- 低周波ノイズ設定にしたNoise Bandsモジュールを使って、音に重みを加えます。
- あるいはNoise Bandsモジュールで、高周波帯にいくつかの狭い帯域を設けることで、「キン」としたレゾナンスを加えてもいいでしょう。
- 小さなセラミックの破片の場合は、Pitchが3.5kHzより高く、Dampingが4~5のModesモジュールが使えます。
接触音はFrictionモジュール(MaterialはRock設定)を使用して作成することもできますが、この場合のPitchは0.5より高くするといいでしょう。
繊維
ロープ、革、ゴムの伸びといった音は、ModularモデルのFractureモジュールを使ってシミュレートできます。
- MaterialはNatural FibersとRubberプリセットを使うといいでしょう。
- 異なる設定で複数のFractureモジュールを重ねると、より密度の高いサウンドを作成できます。
- 伸縮がきつくなるにつれNoiseやGranular Noiseモジュールを加えると、すべてがうまくブレンドされます。
液体
水、泥などの液体は、RainとGooモジュールで表現できます。
- Gooモジュールは粘性の高い液体に適していますが、Rainモジュールは水音に適しています。Bubbleモジュールで「ポチャ」とした個々の泡や水粒も追加できます。
- シャープで短めに設定したEnvelopeで振幅をコントロールすることで、インパクト音を作り出せます。
- また、他のサウンドに水レイヤーを追加するには、RainモジュールのMaterialプリセット (コンクリート、木材、金属、ガラスなど) を調節した音をミックスするといいでしょう。
より複雑なオブジェクトに
GameSynthのパッチリポジトリには、学習リソースとして、あるいは狙った音を設計するための開始点に使える様々なパッチがあります。
リポジトリは、一般的なマテリアルを含むUCSカテゴリをサポートしているため、下図のように赤枠のカテゴリフィルターを有効化し、金属、岩、木、ガラス等を(英語で)打ち込むと、これらのマテリアルをシミュレートするパッチ例を検索できます。
本記事では主にジェネレーターに焦点を当てましたが、他にもプロセッサーを追加すると、より多様なサウンドを作成できます。
既に解説したComb Filterをはじめ、Tube、Cabinet、各種フィルターやEQを活用すると音をカスタマイズできます。
Spectral Delayは、より大きなサイズのオブジェクトの共鳴を表現できます。たとえば下図のように、リポジトリのモジュール検索機能でMetalカテゴリのSpectral Delayを検索すると、様々な面白い実例が得られるでしょう。
また、材質の音作りを踏まえた上で、Modularモデルのコントロールやロジック系モジュールを組み合わせると、摩擦、曲げ、滑り、破壊などの、さまざまな物理ベースの相互作用を持つ、複雑なギミックをシミュレートできます。
たとえば以下のパッチでは、さまざまな衝突音、摩擦音、ロープの音を組み合わせて、木製のカタパルト音(詳しくは別ブログにて)を設計しています。
