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GameSynthで電車の音を作ろう
2023/09/12

GameSynthで電車の音を作ろう

サウンドデザインは、趣味の世界にも没入感を与えることができます。たとえば、先日リリースされたDSPシリーズ専用のDSP Deckを使うことで、TRPGセッションや生配信などで効果音をすばやく再生できます。

最近、Discordサーバーのメンバーから、GameSynthを使用して鉄道模型や鉄道映像の効果音を作る方法について質問を頂きました。古い蒸気機関車から現代のリニアモーターカーまで、さまざまな技術、機械部品、充実した設備が連動してレールを走るため、多種多様なサウンドが作れます。

本ブログでは、電車にまつわるサウンドデザインを正しく軌道に乗せるパッチをいくつか解説していきます。

ディーゼルエンジン

エンジン音は通常、「ノイズの多い成分」と「音色豊かな成分」に分解でき、これらは個別に設計していくといいでしょう。

たとえばエンジンのランブル音は、エンジン音全体の周波数範囲では最も低くなります。

  • 音色部分は、90Hz以下の周波数を持つ単純なPulse設定のOscillatorによって生成できます。 Noise設定のLFOでその振幅をコントロールすることで、音の揺らぎを大きくしています。 不要な高周波成分は、Oscillatorの出力をカットオフ周波数150HzのLowpass設定のEQ Filterに通すことで削除できます。
  • ランブル音のノイズ部分は、Brownian設定のNoiseモジュールを使用し、その振幅とローパスをTriangle設定のLFO で制御してモジュレーションを追加します。このNoiseモジュールは、エンジンから出る空気の流れをシミュレートするNoise Bandsモジュールの振幅もRectifier(整流器)を介すことで制御しています。

メインエンジンのノイズ音も2つのレイヤーで再現できます。

  • まずはLowpassを500Hzに設定したWhite設定のNoiseモジュールを使用します。 周波数が300Hzのbell型のEQ Filterに接続されることで、ノイズがより共鳴を起こします。
  • 2番目のラインは、Sine Bankを使ってエンジンのガラガラ音を発音します。Base Pitchは約200 Hzで、Spreadは0.25に下げ、ある程度の飽和効果を生み出します。Levelsはバンドの周波数とともに減少させていきます。 望ましいサウンドを得るには、より穏やかな方法ではありますが、Tuningsも下げる必要があります。7000 HzのLowpass設定のEQ Filterは耳障りな部分を除去し、Comb Filterは共鳴効果を与えます。
  • Triangle設定のLFOによって、全体的なモジュレーションを与えています。

あるいは、GameSynth Enginesプラグインをお持ちの場合は、トラックまたは戦車モデルを選択し、Patch Player モジュール経由で生成音をインポートできます。 これは完全なモデルを音源としてインポートするため、モジュラーで精巧なパッチを素早く作成するベストソリューションといえるでしょう。

エンジンの最後の層は、高周波のヒス音で構成されます。

  • 周波数範囲が5000~15000 Hzに限定されたPink設定のNoiseモジュールを使っています。 bell型のEQ Filterは 6000 Hzにレゾナンスを追加し、Noise Bandsは4000 Hzに単一バンドを追加するために使用されます。
  • 別のSine Bank(sine波の3/4を使用)は、2300 HzのBase Pitchと小さなSpreadにより、ハイエンドのコンテンツをさらに加えます。そのAmplitudeSaturationSineLFOによってわずかに変調されます。

すべてのレイヤーは EQ(5 bands) Tubeを通過することで、興味深いレゾナンスが生まれ、サウンド全体に特徴が加わります。




電気推進

電車は主電動機を駆動するために、メイン・インバーターを使用して車両の電源を適切な種類の電力に変換します。これらの装置は、列車の加減速時に特徴的なスイープ音を発します。

  • ここでも、サウンドの音色部分を生成するためにSine Bankモジュールを使っています(ただしSpreadは2程度)。適切なタイプのスペクトルを得るために、周波数範囲全体にわたる多数のsine波がより高いレベルに設定されます。
  • 今回は、ノイズの多いコンポーネントにMachineモジュールを使っています。
  • いくつかのフィルターとRing Modulatorを通過した後、 周波数がEnvelopeによって変調されるFrequency Shifterを通すことで、スイープを生成します。同時に、EnvelopeMachine モジュールのThrottleSine BankPitch入力も変調します (ただし、ここではほんの僅かに影響を与えるだけです)。



機械部品

電車には側棒や連結器など金属製の機械部品が多く使用されています。 幸い、GameSynth には、この種のサウンドの合成に役立つモジュールが多数搭載されています。

  • Gearモジュールは機械部品系で最も役立つモジュールの1つです。 軽いクリック音と重いクリック音のバランスを調整したり、速度を変えることで、さまざまな音を出すことができます。 EQ (5 bands)を使用して、面白いレゾナンスを追加できます。
  • Clangモジュールと Gun Foleyモジュールは、主にClockによってトリガーされることで、列車の幅広い機械音を生成できます。 Gearモジュールと同じく、各種フィルターを通したり、共鳴系モジュール (Cabinet, Tubeなど) を組み合わせると、より興味深いサウンドが得られます。
  • 最後に、 (Metal設定にした)Frictionモジュール は、説得力のある摩擦音を生成します。いくつかの狭い帯域を持つNoise Bandsモジュールも同様です。 LFOを介して振幅を制御することで、他のモジュールの動きに同期した周期的なサウンドを作成できます。



蒸気

GameSynthは、電車の機械から発せられる空気の破裂音や、シューと吹き出す音なども作れます。

  • Steamモジュールはセットアップが非常に簡単であるため、特にエアバースト(空気噴射)音の設計の開始点として最適です。こちらもフィルターと組み合わせることで、生成できるサウンドパレットが広がります。
  • NoiseおよびNoise Bandsモジュールを使うと、さらに多くのオプションが利用できます。たとえば、Arpeggiatorによって制御されるフィルターに音を通すことで、煙突の「シュシュ」としたリズミカルな特徴をシミュレートできます。 また、Noiseモジュールは、長いヒス音を作りたい場合にはSteamモジュールよりも実用的です。



通過音

情景音を作る際、電車が通過していく音を作りたい場合もあるでしょう。まずは、汎用的な静的通過音を作成してみましょう。

  • ディーゼルエンジンパッチの一部、つまりランブル音とメインエンジン部分で使ったノイズコンポーネントを再利用します。
  • スピード感を高めるために、Pink設定の別のNoiseモジュールのラインを追加します。これはSaturatorに通した後、Lowpassフィルターで余分な耳障り音を滑らかにしています。
  • 共鳴音を生むために、Rockに設定したFrictionモジュールをFrequency Shifter に通すことで、音にきらめきが加わります。
  • Fractureモジュールは、通過音に金属のぶつかり感を加えるのに便利です。
  • これらすべてのラインはEQ (5 bands)Saturatorに送られ、音がブレンドされます。

さらに、通過する車両コンテナを演出するため、以下のように複数連なった風切り音を加えると、サウンドのリアリティが上がります。

  • まずNoise BandsモジュールとFormant Filterを通したMachineモジュールをミックスします。
  • GainEQ Filterを、Envelopeによって数回上下させることで、(車両の通過ごとに)連続して起こる風切り音を演出できます。
  • このEnvelopeは、パッチの最初の部分のGainもある程度コントロールします。

静的な音と複数連なった風切り音を混ぜることで、途切れることのない動きの感覚が生まれます。




レールのきしみ音

レールのきしむ音は、通過音あるいは通常の列車が動くサウンド演出にも活用できます。

  • Metal設定のFrictionモジュールは、分かりやすい出発点となります。ResonatorおよびWavefolderモジュールはハーモニクスを追加してより粗いサウンドを生み、別のラインのSine Bank モジュールは特定の周波数 (ここでは約2000 Hzと4000 Hz) を強調させます。
  • 2つのNoise Bandsモジュールからの狭帯域によって、1500および5000 Hz付近でさらに多くの高調波が生まれます。
  • これらサウンドをうまく混ぜ合わせるため、追加のNoiseモジュールが低レベルに重ねられ、AmplitudeLowpass入力が大きく変調されます。
  • パッチの全体的な振幅は、MetaParameterによって制御されます。また、より高い値に達したとき、Pitch Shifterの効果をわずかに強めるよう設計することで、よりリアルなきしみ音が生成されます。



信号機

信号機の音は列車自体から出るものではありませんが、鉄道の代名詞であり、リアルな情景音を演出するのに欠かせない音といえるでしょう。


踏切信号の作り方:

  • Modesモジュールの複数のインスタンスを使って、単純なベル音を生成します。モードがベルの基本周波数に相対的に調整されていることを確認しましょう。
  • FiltersCabinetDelayモジュールを加えて、サウンドが構内から出ているかのように感じさせます。
  • もちろん、Clockを使用して信号を繰り返しトリガーします。

出発信号の作り方: 出発ベルは国や地域によって異なります。 たとえば日本では、サウンドスケープに魅力的な性格を加えるシンプルなメロディーであることがよくあります。

  • これらの信号は、多くの場合、Oscillatorの振幅を別のOscillatorで変調することで再現できる合成チャイムのように聞こえます。 この例では、より複雑なサウンドを作成するために、三角波(Triangle)を使用して正弦波(Sine)を変調します。
  • Sequencerモジュールは、数回繰り返すことができる単純なメロディーパターンを作成するために使います。SequencerOscillatorとそのEnvelopeをトリガーし、2つのOscillatorのピッチを制御します。
  • 最後に、Reverbモジュールを追加して、鉄道プラットフォームの音響をシミュレートできます。

GameSynthのコマンドラインバージョン(GameSynC)の-sequence 関数によって出力されたファイルをインポートすることで、Sequencerモジュールのメロディックパターンを簡単に作成することもできます。この機能を使用すると、メロディーの音符をテキストファイルに入力する形で指定できます。





このブログが、鉄道模型や鉄道映像などの効果音のデザインを始めるきっかけになれば幸いです。 これらのパッチを出発点とし、自由に使用して実験してください。他のタイプの車両や機械装置用の音を生成するように変更することもできます。


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