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アニメーションのためのサウンドデザイン 後編
2024/04/04

クリエイターズインタビュー:プロシージャルクリーチャー
(Denis Kozlov)

今回から、私達が深く尊敬する世界中のアーティストとのコラボレーション/インタビューを取り上げる新シリーズが始まります。クリエイターインタビュー第一弾は、プロシージャル・ベスティアリ(プロシージャル技術を用いた空想上の小さな生物の世界)「Kozinarium(コジナリウム)」を制作されている、Denis Kozlov氏です。創造的なプロセスの一部に、プロシージャル技術がどう活用されているのか、お聞きしました。

こんにちはデニス、お会いできてとてもうれしいです。あなたのアート作品の経歴ついてもう少し詳しく教えていただけますか? イラストレーション(静止画)から始めたのですか?

こんにちは、ニコラス。ご招待いただき、誠にありがとうございます。とてもうれしく思います。私は古典的なイラストレーションの仕事もしていますが、主な媒体は常にCGでした。CGを始めたのは私が12歳のときで、友人がコンピューターグラフィックスというものがあると教えてくれました。「絵を描く時にコンピューターでやれるんだよ」。当時の私はまだそれを知らなかったのですが、絵を描くこともコンピューターも大好きだったので、すぐに夢中になりました:) 最初のツールとスキルを習得するまでにさらに数年かかり、それ以来、まずテレビや広告、その後ゲーム開発や長編映画というキャリアを辿ることになりました。3Dとコンポジット両面で、「コンピューターで描く」仕事なら何でも携わるようになりました。現在はプラハを拠点としており、今もほとんどの活動を続けています:)

プロシージャル技術をどのようにして始めましたか? 好奇心というよりも、それがあなたの作品にとって理想的な解決策であると感じましたか?

それは主に性格によるものが大きかったと思います。ある人は「建築は踊れない」と言いますが、それぞれの芸術形式には独自性があり、私にとってそれはまた、ダンスや書道など「その瞬間の芸術」と呼ぶものと、実際に元に戻すことができる「計画された芸術」との違いも表しています。私は明らかに後者が性に合うタイプです。


プロシージャル テクスチャをいじったり、3DSMax のモディファイアを使用して小さなパラメトリックセットアップを組み立てたりすることに特別な醍醐味があることに気づき始めたのは、90年代後半の働き始めの頃でした。

その後、いくつかのより大きなシステムを概念化し、それらを実装する方法を探し始めました。それが私をHoudiniに導き、2015年に最初の実質的なプロジェクトであるプロシージャル航空機設計ツールキットをリリースしました。Houdiniはモデリングツールとしてみなされていなかったので、とても楽しい時間でした:)

具体的には、コジナリウムはどのようにして誕生したのでしょうか?このプロジェクトでプロシージャル生成を使用する動機は何ですか?

面白いことに、それは(通常の制作プロセスとは)逆の順番で起こりました。ある日、私はテクノロジーのデモンストレーターとしてプロシージャルクリーチャーデザインツールキットを作成しました。すると、私の妻でコジナリウムの共著者であるエレナが、実際にそれを使って遊びたいと言いました。私は小さなパイプラインを構築し、それらの小さな生き物たち、つまり私たちが「コジナック」と呼ぶものを作り始めました。ジェネレーターは、背景写真、サウンド、VFXなどの本格的な映像合成プロセスの1ステップにすぎません。


ワークフローとクリーチャーがどのように生成されたかについて少し説明してもらえますか? 多様性はどこから来るのでしょうか?遺伝学またはその他の生物学に基づいたルールが使用されていますか?

プロシージャルシステムの設計では多様性が大きな関心事となるため、これは非常に良い質問です。Kozinariumのコア3Dジェネレーターモジュールに関しては、私は多くの研究を行っており、実際に遺伝的アプローチの実装を検討していました (Sean Carroll の著書『Endless Forms Most Beautiful』と Hox 遺伝子の概念はかなりの影響を受けました)。しかし、最終的に開発を成功させた2つの主なトリックは、(A) 信憑性を保ちながら野生の形態の多様性をサポートできる無脊椎動物に固執すること、と(B)身体の形態、四肢、運動タイプを概念的に一般化すること、でした。その結果、最小限のパラメーターで最大のバリエーションと相互運用性を実現できました。SDFの使用により、この柔軟性も促進されています。

マシンによるランダムな選択と比較して、プロセスのどのくらいがハードコーディングされていますか? システムはクリーチャーを作成するためにどの程度の自由度を持っていますか?

このシステムは双方向で動作するように設計されており、アーティストとRNG(乱数生成)の両方がすべてのコントロールにアクセスでき、どのコントロールにサイコロを振り、どのコントロールをオーバーライドするかを選択できます。エレナは通常、手動でデザインすることのほうを好みますが、私は多くの候補を生成し、キュレーションから作業を開始することを楽しむことがよくあります。

生成システムは理論的には無限の結果を作成できます。公開する生き物を選択する際にどのような基準を使用しましたか?

これは通常の芸術的な意思決定の通りだと思います。頭の中にある意図に向かってビジュアルを進めていくか、あるいは幸運的にひらめいたことのどちらかです。ブラシストロークをどこに配置するかを決めるのとそれほど違いはなく、ツールは結局ツールでしかありません。

さらに先ほど述べたように、生成3Dシステムはパイプラインの1要素にすぎません。シェイプとモーションが完成したら、コンポジットで各クリーチャーの実際の外観とシェーディングを作成します。このプロセスは、自動的に繰り返して別のKozinak(生物)に転送できるという意味でプロシージャルですが、創造的であると同時に非常に意図的で、入念に決めていく必要があります(そして、ここの作業が私のお気に入りのステージです)。それは、「コンピューターで描く」というよりは、ベーシックな数学を使ってそれぞれの生き物の外観を描いている、と言った方がいいでしょう。

その後、これまでに作成したすべての要素を結び付ける、それぞれのストーリーを考え出します (または、以前のアイデアを完全にひっくり返すこともあります:)


あなたは他のタイプのプロジェクトでもプロシージャル技術を使用していますが、それについてもう少し詳しく教えていただけますか?

お見せしたほうがいいでしょう:) 以下に私の過去作品をまとめた動画デモをいくつか載せます:

 

気に入って頂けた場合は、https://vimeo.com/kozloveや、私のWebサイトにより詳しい情報があります。

最近ではAIの実験も行っていますね。この新作には、昆虫や魚などの生き物も登場します。生成AIとプロシージャル手法は、ワークフローと結果の制御量の点でどのように異なりますか?

このAIアートプロジェクト(私が Mechanical Gardensと呼んでいるプロジェクトの一部)は、制御というよりは探索がすべてでした。私はCGや技術そのものを使って行うのと同じ芸術的空間を探索しており、両面で多くのことを学びました。私はそれを、カメラを持って潜在的な空間を探索し、実現できたかもしれないが実現しなかった芸術を捉えようとすることだと考えています。


アプローチの違いに関して言えば、プロシージャルと生成AIシステムは、同じスペクトルの対極を象徴していると言えます。これらは、ビジュアルを高レベルで作成するという本質的に同じタスクを解決します。機械学習は計算的にアプローチするのに対し、プロシージャルは分析的にアプローチします。プロシージャルシステムは、制御と理解がより重要です。作者は内部で何が起こっているかをまさに知っていて、出力も正確で期待どおりです。生成AIシステムは内部の大部分がブラックボックスであり、出力にはある程度の不確実性がありますが、安価でスケールもはるかに優れているため、商用への利用となると、(良くも悪くも)かないません。

私は、生成AIは、私たちの作成方法に革命をもたらし、誰でも簡単に利用できるようにする素晴らしいテクノロジーであると信じていますが、現在の実装、特にトレーニングデータには多くの問題があることも感じています。私たちはよりクリーンなデータセットを絶対に必要としています。また私は、プロシージャルアプローチと生成/MLアプローチの共生によって、より優れたシステムを構築できると信じており、そうなることを願っています。


様々な生き物に音を演出!

インタビュー内の動画はDenis氏によって提供されたもので、コジナリウムの様々な生き物を紹介しています。さらにTsugiのサウンドデザイナーによって、100%プロシージャルな生き物たちのために、GameSynthでいくつかのパッチを作って動きに音をあて(動画シンクロ再生機能を使うと便利です)、背景の環境音も追加しました。


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