今回は、主にモジュラーモデルを使って爆発、レーザー光線、シールド効果音などをデザインし、崩壊しかけている宇宙戦艦の激しいバトルシーンに焦点をあてていきましょう。
シューティング系音をモジュラーモデルで作ろう
ほとんどの武器の効果音はモジュラーモデルで設計されています。60以上のジェネレーター、エフェクト、コントロールモジュールが備わっているため、それらを組み合わせれば、非常にリアルな音からシンセティックな音まで、あらゆるタイプの音をデザインできるでしょう。
「タタタン」という電子機銃の音:
Clockモジュールを使うことで、3種類のモジュールを同タイミングで発音させています。
- ・Chirpモジュールは、銃タイプの武器を作るのに便利です。
- ・Blipモジュールは、FM合成によって(クラシックな)ピッチ変化音を生み出します。
- ・Oscillatorで、低音を作り出しています。
「ズキュウウン」という画面を一掃する大きなレーザー音は、以下のように複数のモジュールを組み合わせています。
Chirpモジュールは強力な攻撃を作るために使用されます。また、サチュレーターをかけたノイズモジュールと、わずかに離調したオシレーター2つを使っています。エンベロープは、レーザーの作動音を作り出すためにオシレーターのピッチとノイズの周波数範囲を0.5秒間で制御しています。ザラついたパワフルなレーザー音にするためのテクニックとして、オシレーターの振幅は「ランダム」形状のLFOによって変調をかけています。
戦艦から発射される2本のレーザー音は、ローパスフィルターを通した3つのノイズモジュールで作られています。フィルターのカットオフ周波数はエンベロープによって時間変化します。サチュレーターを使い、サウンドをよりアグレッシブにしました。
また音にパンチを加えるため、レトロモデルで右図のようなモデルを作成しました。2つのオートメーションカーブを使い、オシレーターのピッチとLFOの両方をコントロールしています。
最終的なレーザー音:
戦艦から展開されるシールド音の感覚は、映画「スタートレック」のシールド効果音(プレドミナントトーン)からヒントを得ています。映画の効果音をフィーチャーするため、複数のオシレーターを重ねることでシールド音を表現しました。
3つのオシレーターで構成されたシールド作動音のひとつは、LFOで振幅変調され、かつ最初わずかにピッチが上がる音を作り出します。パッチのもう一方の分岐は、シールドがアクティブになっている間再生される、ゆっくりと変調されたパルス発振器で構成されています。このパッチではScale Offsetモジュールが使用されており、制御信号の上限・下限範囲を調整しています。
LOD(レベルオブディティール):遠い爆発音と近い爆発音を別レベルに分けて、音を作成してみよう
アニメカットシーンは戦場のため、遠くでも近くでも爆発が聞こえるのが自然です。そのため、必要なレベル(LOD)に基づいて、さまざまな爆発音パッチを作成することにしました。プロシージャルサウンドデザインのLODについてはこちらでも紹介しています。
ゲームでランタイムエンジンで音を表現したい場合も、このように「レベル」ごとに異なるパッチ(のセクション)を操作すれば、CPU消費を節約しながらも、密度の高いサウンド表現が実現するでしょう。
まず前景の爆発を確認しましょう。
最初のインパクトを生むChirpモジュール、音の低音を生み出すBlipモジュール、そして爆発音の本体を生み出すGranular Noiseジェネレーター を使い、EQとリバーブモジュールで音を成型して、存在感のある爆発音を作っています
次に、「遠くでドンパチなっている」爆発です。まずは、Distributionモジュールで1秒間に数回爆発を引き起こすモジュラーパッチです。
トリガーシステム以外は上記の単一の爆発パッチに似ていますが、CPUコストを小さく抑えています。Granular Noiseモジュールは通常のNoiseモジュールに置き換えられ、Blipモジュールはローエンドを作成するための、よりシンプルなOscillatorsモジュールに置き換えられました。また、エフェクトも省略されています。
遠方の爆発のためのもう一つのパッチはParticlesモデルを使用しており、「Warfare」プリセットに基づいています。花火の効果音サンプルをグレインとして使用しており、スケッチパッドに線を描くと、爆発の位置、トーン、音量をコントロールできます。Particlesモデルはスケッチパッドに様々なパラメーターをアサインできるため、爆発のレート、レゾナンスなどを簡単にコントロールすることもできます。
戦艦や戦闘機の飛行音
戦艦は激しい攻撃を受けており、沈みかかっています。
エンジンの出力が徐々に低くなる演出のために、オートメーションカーブはゆっくりとピッチを右肩下がりにしています。音源自体は、ややザラザラしたサウンドを作り出す、飽和オシレーターとノイズモジュールの組み合わせです。エンジン音の回転感を出すために、ジェネレーターの振幅はLFOによってモジュレートされています。
小型戦闘機が通り過ぎる音は、前ブログの未来都市の空中バイクと同じように設計されています。しかし、今回はモジュラーモデルに3つ以上の異なるレイヤーを作成し、それをWhooshモデルの音源として使用しました。
最初のレイヤーは単に標準プリセット「Jet Combustion」に基づいています。音はノイズモジュールにサチュレーター・コーラス・フランジャー効果をかけることで作られています。さらに音をWhooshモデルにかけることで、攻撃的・低音のきいた通過音を生み出せます。
次のレイヤーも似ていますが、ノイズモジュールの振幅・および追加したフィルターのカットオフ効果によって、柔らかく高い周波数範囲の音になります。また、スケッチパッドでより大きなドップラー効果(ピッチ変化)の勾配を作りました。
最後のレイヤーは、キレのある音のためにフィルタリングされたCreatureモジュールを中心に構築されています。Whooshモデルのスケッチパッド上で素早く動かしてドロップトーンと組み合わせると、非常に特徴的な高速通過音が作成できます。
これら3つの特徴的な 音を重ね合わせることで、マッハで通り過ぎる戦闘機の音のような、非常にダイナミックな音へと仕上がります。
完成した効果音:
これで、戦艦バトルシーンの記事は終わりです。

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※GameSynth ver.2019.1以上が必要となります。 のちにオンラインパッチリポジトリにも追加されます。
次回の投稿では、異星人の声をVoiceFXモデルで作ってみましょう!