トップ Tsugiブログ ゲーム・アニメシーンのサウンドをGameSynthでつくろうSF④-異星人のミュージアム
2019/07/24

ゲーム・アニメシーンのサウンドをGameSynthで
つくろうSF④-異星人のミュージアム

シリーズ最後の解説となりました。今回は様々な惑星の種族が集うミュージアム、メインは「ロボット・エイリアン等の異星人の声」の作り方となります。


テレポーテーション

21

科学者がテレポーテーションで現れるときの効果音は、2つの効果音パッチを作り、ミックスしています。

2

左のパッチは、青いテレポーテーションの輪っかを演出するための第一ステップになります。2つのオシレーターが、ChorusとFlangerモジュールを通して送られており、これによってハーモニクスが発生し、電気系を連想させる音になります。

さらにこの音をParticlesモデルに取り込み、「上昇していくピッチ」「LFO」「ディレイ効果による渦巻きのような効果」をストロークで出し、時空ワープっぽさを表現しています。

さらに、科学者がフェードインで現れる際の「シュワーン」音も作りました。

2

フォルマントフィルターを通した3つのオシレーターで構成。また、FlangerとChorusモジュールは音にハーモニクス効果を与えるため、これによって「転移している」ような音になります。スクリーンショットには表示されていませんが、エンベロープの形状は、「増加→持続→減少」で構成されています。

次にこの音をパーティクルモデルに取り込み、さらにペンストロークで加工しています。今回LFOは使用していませんが、「Movement Modulation」モードを使っており、これにより粒子のちらばる方向とともに音も変化する仕組みとなっています(粒子が左右にちらばれば位相が影響、上下にちらばればピッチに影響します)。アニメーションも青いワープが何重にも広がっているため、シーンにマッチした広がりのある音になるでしょう。

最後に、持っているオーブが光り、会話が始まる際の「ポワン」音です。
2

モジュラーモデルで、シンプルに2回音が鳴るモデルを作りました。 Sequencerモジュールのイベントを使って、 音が鳴るタイミング(オシレーターのトリガー)と音の高さ(オシレーターのピッチ)を調整しています。モジュラーモデルで小さなメロディックシーケンスを作成したいとき、この方法は便利です。さらにいくつかのエフェクトモジュールを噛ませ、音を幻想的にしています。

異星人との会話

次のカットでは、ロボットとクリーチャー型の異星人がモニターに映り会話が始まります。

2

異星人の顔モニターが「シュワン」と現れる際の音は、WhooshモデルではなくModularを使用しました。Noiseモジュールはバンドパスフィルターを通り、そのカットオフはオートメーションカーブによって徐々に下がります。結果として狭い周波数範囲を持ち、Flangerモジュールによって羽ばたきのような効果を与え、最終的にReverbモジュールがかかっています。

VoiceFXモデルで地球外生命体の声を作ろう

以前紹介したメカのAIのように、音声読み上げツール(Alto Studio)でボイスを 作成することもできますが、今回は弊社サウンドデザイナー自身が声優となり、大元となるボイスサンプルを録音し、それをVoiceFXモデルで変調させました。VoiceFXモデルにはボコーダー、リングモジュレーター、ピッチシフター、デグレーダーなど多数のエフェクトラックが備わっています。(声をR2D2のピロピロ音に変換できる、ユーモラスな「ドロイド」ラックなどもあります)


VoiceFX変調ソース

今回のアニメーションでは、両ボイスともに比較的単純なエフェクトチェーンで仕上がっており、追加のモジュレーション機能は使っていません。

2

メカ風な声は、ピッチシフター、2ボイスコーラス、アグレッシブリングモジュレーター、コンプレッサーを含む「Extra-Terrestrial」プリセットを少し編集したものです(ややロボット感のある高音へとカスタマイズしています)。

大元の録音サンプル
エフェクト適用後

2

原始人風な2番目の声は、別のGameSynthプリセット「Big Monster」をカスタマイズしました。エフェクトチェーンには、ピッチシフター、サチュレーター、フランジャー、コンプレッサーが含まれています。

大元の録音サンプル
レコーディング

2

また会話の間、バックで「ピピピ」音が鳴っています。左図の右側のラインでは、オシレーターの振幅をLFOで変調することによって「ピピピ」音を作っています。左側のラインではNoiseモジュールの周波数範囲を変調することで、クリック感のある「カチャカチャ」音を追加しています。

会場の環境音

22

2

シーン全体を通して、雰囲気のある「フワーン」というアンビエント音が聞こえます。まずインパクトモデル内のImpact Resonanceでガラスのような音を作り出した後、下の動画のようにParticlesモデルで線を描くことで、シンセパッドのような効果音をつくりだしました。



また、黒い石版が照らされたときの光のような効果音も作りました。

2

まず低音のうなり音を作ります。これはモジュラーモデルで設計されており、パニングをコントロールするためのLFOと、振幅をコントロールするためのLFOの2種類を使ったシンプルな音です。

また、先ほどのガラス音パッチを再利用し、Particlesモデルでの設定を変えて「石版に照らされる幻想的な光」のような音を作りました。


4回の記事を通じて、GameSynthであらゆるSFシーンの効果音をデザインしてきました。また大部分の効果音パッチは、サウンド生成時のCPUコストを抑えるよう意識した設計を行ってきました。そのためゲーム作品にて、GameSynthランタイムエンジンで利用していくといった利用も可能です。

効果音サンプル再生と比べ、メモリフットプリント消費を抑えながらも、入力パラメーターやランダム幅を読み取りながら効果音バリエーションをリアルタイムに創り出していく、よりインタラクティブなオーディオ演出も可能になるでしょう。


SF-3-1

今回使用したサウンドパッチ一式は、以下からダウンロードできます
DOWNLOAD ALL PATCHES

※GameSynth ver.2019.1以上が必要となります。 のちにオンラインパッチリポジトリにも追加されます。

Copyright © Tsugi GK. All rights reserved.