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GameSynth 2022
2022/05/24

GameSynthで日常生活にあるフォーリー音を作ろう(前編)

GameSynthパッチ制作 Accel Speller
執筆者 Nicolas Fournel

プロシージャルサウンドは、フォーリー系サウンド録音の代替にもなる優れた手法です。

速い(現地まで録音に行く必要がない)
安価(録音機材や小道具、フォーリーのピットなどがいらない)
柔軟(何度も再合成でき、新しいテイクやポストプロセシングを必要とせず、プロジェクトに合わせて調整できます)

準備や録音の面倒な作業(面白い部分もありますが…)がいらないだけでなく、ダイナミックレンジは常に最大化され、多くの音バリエーションを数秒で生成でき、必要に応じてアニメーションカーブを自動的に一致させるといった特徴もあります。

では、音のリアルさにおいてはどうでしょう?
そこで今回は、日常生活のシーンの中で、キッチンにおけるリアルなフォーリー音を作ってみましょう。

これまでのブログで、アクションシーケンス自然環境の音作りを見てきましたが、今回も録音素材は一切使用せずに、100%プロシージャル手法で、料理シーンに色々な音演出を施していきましょう。

アンビエンス音

食堂の調理場らしさを出すため、全シーンに換気扇の「ゴオオー」音を入れています。ただしカットごとに微妙に響きを変えています。パッチでは左から順に、

Noise:ピンクノイズ設定にし、Biquad Filter(約1400Hzでローパス処理)に通して低いうなり音にしています
Noise Bands:低中周波数で2つのバンドをもたせ、さらにゆっくりとピッチ変動させることで換気扇の揺れを表現しています
Oscillator:サイン波にChorusをかけることで、「ヴーン」とした部屋の電気音を作っています
最後にEQ 3 bandsで高周波を減らし、それをわずかに設定を変えた左右のReverbに送って、ステレオ音の空調を作成します。

このパッチをベースとし、接写カットである2番目のカット(ネギの千切)では、EQ 3 bandsHighGainMidGainを下げてトーンを静かにし、落ち着いた感じにしました。一方3番目のカット(中華鍋のシーン)では、Noise Bandsにさらに大きなバンドを追加し、Biquad Filterのカットオフを2000Hzに上げることで、電気音をやや強調しつつ、Oscillatorの周波数も上げて、高速に回る換気扇に仕上げています。

ナイフを研ぐ音

ナイフを研ぐ音は、シャープナーとナイフがぶつかる「カツン」という衝突音と、「シャッ」という摩擦音パッチで構成しています。


衝突音:まず基本音としてImpactモジュールを使っています。

9kHz付近に倍音を加えるResonatorに送り、音に共鳴を作ります。さらにインパクトを加えるため、Noise Bandsが別途ラインに追加されます(5〜15kHzの間に5つの狭いバンドを設けています)。ピッチはランダム化して範囲内でのバリエーションを作成し、追加のEQ 5 bandsモジュールで一部共鳴感を強調します。最後のReverbモジュールは、2つのラインを混ぜ合わせて、少し距離感を出しています。

さまざまな材料(金属、ガラス、木など)をシミュレートする簡単な方法として、ベル型バンド、最大Q、および数dBのゲインを備えたEQ 5 bandsモジュールを使用すると便利です。
下図のようにスペクトルピークの位置を調整することで、100〜300Hzの範囲で木材のような共鳴、または500〜5000Hzの範囲での金属の共鳴など、さまざまな材質感を出せます。


摩擦音:Friction(摩擦)モジュールを主な音源とし、材料を金属に設定します。またNoise Bandsジェネレーターによって高周波の狭いバンドを追加して、音に厚みをつけています。

考え方的には、これらのモジュールのピッチを変化させることで、シャープナー上のナイフの「シャッ」というスライド音を作ります。Frequency Shifterモジュールで信号をより高い周波数範囲にシフトし、EQ Filter(バンドパス設定)は変調された周波数とレゾナンスを介して動きを与えます。最後に、CompressorClipperGainモジュールで音のボリューム感を上げています。

布:人の存在感も加えたいため、布パッチも設計しました。これは単純なNoise BandsEQ 5 bandsに通すことで作っています。ランダムな動きを生成するPerlin Noiseによって、着衣を擦るような変調を与えています。レートを調整すればさまざまな速度の動きを作れるので、このパッチは色々なシーンで役立つでしょう。

ネギの千切り

千切り:Granular Noiseモジュールとそれに続くSaturatorで、ザクザクとしたネギの音を作っています。
約0.1秒の短いEnvelopeで振幅を制御して、瞬間的に「ザッ」とカットする動きを作り、最終的にEQ 5 bandsで低~中周波数を減らしています。カットごとに微妙に音を変えるため、Granular Noiseパラメーターにランダム幅を割り当て、エンベロープのバリエーションを15%に設定し、かつそのDuration(音の長さ)もランダム化させています。

これにより適度な音のバリエーションが生まれ、リアルで反復性のない「ザクッザクッ」とした千切り音になります。

まな板に当たるナイフの音は、Granular NoiseモジュールとNoise Bandsモジュールを使用します。Granular Noiseにローパス設定の EQ Filterを通すことで、「ノイズ系衝突音」を出せます。また、低~中域に狭いバンドを持つNoise Bandsモジュールで、木の衝突を演出します。2つの音のタイミングを若干ずらすため、Noise Bandsの後に30ミリ秒のTime Shifterを挟んでいます。

このブログの前半はここまでです。料理シーンの音を、プロシージャルサウンド技術を使ってリアルに演出していきました。後半は引き続き、中華鍋、炎や炒め物、皿などのフォーリー音を作って、おいしい食事を調理していきます!

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