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GameSynth 2022
2022/05/31

GameSynthで日常生活にあるフォーリー音を作ろう(後編)

GameSynthパッチ制作 Accel Speller
執筆者 Nicolas Fournel

プロシージャルサウンドで日常生活(料理)シーンに音をあてるブログ、後編です。

前回のブログでは包丁を砥ぎ、ネギを切るシーンを解説してきました。今回は中華鍋で炒め、皿を置いてベルを鳴らす動画後半の音作りを見てみましょう。繰り返しになりますが、全ての音は一切録音素材を使わず、全てプロシージャルで作っています!

鍋で炒める

一番の見どころ、中華鍋で炒めるシーンです。 音はリアルさだけでなく、コックの動きと完全に一致することが求められます。幸いプロシージャルサウンドならば、「映像の動きに合わせる」ことも得意としています。このセクションでは、4つのパッチを作成しました。

油で炒める:メインの音源としてFireモジュールを使い、信号は3つに分岐させています。

左のラインは、FireモジュールをFlangerにかけ、炎が燃える「ボオオ」を出しています。中央では炎をハイパス設定のEQ filterに通すことで、「パチパチ」とした油が跳ねる音を生んでいます。右のラインでは、NoiseTubeモジュールで「ジュワー」と炒める音を演出していますが、その振幅はEnvelope Followerによって、炎音の大きさと同期するように繋がっています。

中央と右のラインはミックスされ、Biquad Filterを通過しますが、そのカットオフ値も炎と同期するように繋げています。また、上のAutomation Curveは、映像の火の強さを見ながらカーブを作成するといいでしょう。

中華鍋とお玉:中華鍋をバーナーの上で動かしたり、お玉で叩く金属音は、以下のパッチを使いました。(ちなみにどちらの音も、物理的にはほぼ中華鍋から出る金属音となるので、同じ扱いでいいでしょう)

まず音源として、中周波数に複数の厚いバンドを持つNoise Bandsモジュールを使い、低音で響く音を追加するためSine Bankも加えています。さらにNoise Bandsは、バンドパスおよびローパス設定の2つのEQ Filterにも接続し、それらのカットオフ周波数は、Perlin Noiseによってランダムな変調が生まれるようになっています。単体で聴くと、鍋のような金属製の入れ物にありがちな、「ボコンベコン」としたバウンド音になるのが分かります。

これらをミックスした音を、Spectral Delay(Delay値を小さく、Feedback値を大きく設定)に通すと、金属の共鳴が生まれます。

GaitNoise BandsSine Bank音を複数回トリガーし、ランダムな衝突音を作っています。また、ランダムLFOの値をその都度保持するSample & Holdを使って、音の大きさも変わるようにしています。

またお玉のパッチは、上記のパッチをベースに

  • Noise Bandsのピッチを少し高く
  • 右のラインのフィルターをバンドパスEQ Filterのみにし
  • Spectral Delayの中間周波数に重きを置き
  • さらにDelayFeedbackの値も僅かに下げる
ことで、中華鍋よりも軽めで共鳴の少ない金属音を作り出しています。

また以下のパッチは、鍋とお玉がが擦りあう短い摩擦音を出しています。前のパッチをベースに、GaitLFOSample&Holdモジュールを消し、音源の長さを変えることで、衝突音ではなく摩擦音に仕上げています。またEnvelopeの時間や曲線をランダム化させて、毎回新しい音のバリエーションを作っています。

このように「音の特徴を維持しつつも、さまざまなインタラクションの動きを生成できる」のはプロシージャルサウンドの得意とするところです。パッチのトリガー方法と振幅の制御方法を変更して、さまざまな衝撃音や摩擦音を生成できます。

皿とベル

完成した料理をカウンターに置き、ベルを鳴らすシーンを見てみましょう。皿を扱う音は2つのパッチ(衝突と動き)に分かれています。

皿を置く音:下の動画のように、説得力のある皿の「ゴトン」音を出すため3本のラインを作りました。

まず左のラインではImpactモジュールとMaterial(材質)をGlassに設定したFrictionモジュールを合わせ、Spectral Delay(物体共鳴を与えるために使用) に落とすことでセラミック感のある音を作っています。

中央のラインでは、別のImpactモジュールで、カウンターの木材を表現しています。

右のラインでは、低い周波数バンドを持つNoise Bandsを音源にし、次にローエンドの周波数を一部強調するためにEQ 5 bandsへ送ります。さらに、サウンドを200 Hz〜500Hzの範囲に保つためにEQ Filterに通すことで、ノイズの多い重めの「ドスン」を作っています。

最終的にこれらの音は、Pitch Shifterでグローバルピッチをランダム化し、次のEQ 5 bandsで高周波を減衰させて低音を強調し、大きな皿を置くような音に仕上げます。

皿を押す音:皿を「スーッ」と押し出す音には、MaterialをRock(岩)とWood(木)にした2つのFrictionモジュールを使っています。また、音に厚みを持たせるため、Noise Bands(持続時間を少し長く)も加えています。

それらの振幅やピッチをEnvelopeで時間変化させ、さらにEQ 5 bandsで木の上を滑るような共鳴音へと仕上げています。

カウンターベル:動画の最後のベルの音は、ノイズ成分の多い短い「カツン」音(この音にはもちろんImpactモジュールが最適でしょう)と、異なる共鳴音を出す4つのModesで表現しています。

ModesはそれぞれでFrequency(周波数)とDamping(減衰)が増加して出力されます。またスローなLFOレートのChorusモジュールで、現実のベルらしいリアルな音の揺れを与えています。

2番目のModesは、Automation Curveによってあえて遅れて共鳴し始めるように調整し、全てが同時に鳴らないよう、よりリアルな音に近づけます。さらに、Arithmeticを使って信号をサイン波LFOで乗算し、振幅を変化させて「ホワンホワン…」とした波打つような共鳴に仕上げています。

リアルなフォーリーサウンドをプロシージャルに作り出すテクニックを、ブログ2部構成で見てきました。

今回のパッチも活用しながら、GameSynthを使ってゲームや映像作品の日常シーンに、リアルな音の演出をしてみましょう!

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