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GameSynthでシネマ風のサウンドデザイン
映画、および映画トレーラー系映像では、効果音が重要な要素になります。見ている人の感情を呼び起こし、ストーリーにインパクトを与える力があるからです。今回は、GameSynthで一連の効果音を作り出していくテクニックを紹介します。
風切り音
GameSynthには、Whooshモデルなど、風切り音を作る方法が色々用意されていますが、今回はModularモデルを使って、様々なモジュールを組み合わせたオリジナルの風切り音ジェネレーターを設計してみましょう。出発点としてNoiseモジュールを音源に、そこからパッチを組んでいくといいでしょう。
- まずはNoise Bandsモジュールで、低域と中域に3つの広帯域を設けます。
- 次に、Chaosで荒々しさを加えます。
- 最後に、低音をブーストするシンプルなSine波Oscillatorも加えます。
ジェネレーターを設定したら、さらにコントロールを追加してサウンドを設計していきましょう。
- 風切り音は通常アタック-リリース(音の振幅が台形型)のカーブが基本になるため、今回はMapperモジュールでジェネレーターの振幅などを時間変化させることにします。
- 全てのMapperは、たった1つの(台形型の)Envelopeで制御することにします。こうすることで、音の長さが違うバリエーションを量産したり、パッチ全体の形状をコントロールすることが容易になります。
その後、さらにいくつかの効果を追加します。
- EQ Filterで全体的な動きにめりはりを与えます。その周波数は前述のEnvelopeと専用のMapperによって制御されます。
- ChorusとFlangerでモジュレーションを追加します。作りたい音のタイプによってはLFOを使ってもいいでしょう。
- 最後に、Pannerの後に2つのSpectral Delayを繋げることで、高密度のステレオエフェクトが加わります。
一部のパラメーターにランダム幅を割り当てることで、自動的に音にバリエーションが生まれる設計になります。
たとえばピッチとフィルターを制御するMeta Paramterを2つ準備したのち、作成したパッチをWhooshモデルに読み込んで、スケッチパッドのX、Y軸でMeta Parameterを操るように線を描く方法もあります。狙った音を直感的に作れるため、こちらの方法も便利です。
ライザー
ライザー音(クライマックスまで次第に上昇していくような演出音)は、シーンに緊張感をもたらすためによく使われます。
- 風切り音と同様に、複数のMapperに接続したEnvelopeがライザー全体の形状を制御します。Envelopeは次第に上昇する形で、Mapperのいくつかは最後に急降下する形状にしておきます。
- 動きのベースとなる音源はpink設定のNoiseです。音は2つのEQ Filterに送られます。ラインの1つは高周波にレゾナンスを持っており、よりトーンの高いサウンドを発します。
- Chaosモジュールは、サウンドが続くにつれfeedback値が増加し、徐々に荒々しさをもたらします。
- Frictionモジュールは、金属摩擦のような共鳴音を与えます。音の後半では、他のノイジーなレイヤーによってかき消されるため、主に音の前半で聞こえます。
- 音のラストで、Saturatorに繋がったMega Sawによる、過激な高音が次第に聞こえてきます。
最後に、2つのSpectral Delayがステレオサウンド効果をもたらします。
インパクト音
GameSynthでは、インパクト音も様々な方法で生成できます。ModularモデルでもたとえばModes(モード)、Impact(衝突)、Clang(金属板)といった便利なモジュールが用意されており、映画系サウンドデザインで役立ちます。さらに強い効果が必要なら、Thunder(雷)とGunshot(銃声)も使えるでしょう。以下に、シンプルながらダークなインパクト音を紹介します。
- 低周波のImpactモジュールとOscillatorモジュールを組み合わせて「ドッ」とした最初のぶつかり音を作ります。
- CompressorとSpectral Delayを介すことで、サウンドに「ズドン」とした深みが加わります。
- 別のラインでは、pink設定のNoiseをlowpassで構成されたEQ Filterに送ります。リリースを長くすることでフェイクリバーブのようなノイジーなテールが作成され、サウンドに重みが増します。
- モジュール後半では、別のlowpassのEQ Filterと、Clipper、Saturatorによって、全ての音源を結合しています。
- Ring Modulatorはザラついたトーンを生み、不気味な高音サウンドを加えています。
- 最後に、ステレオ出力の片側にAllpass Filterを使用して、ステレオ効果を作成します。
スティンガー(ホーン音)
映画ではよく「ブワァーン」とした、不穏な(かつライザー音よりは穏やかな)ホーン音が流れてきます。ブレードランナーなどで耳にするこういった音はスティンガーなどと呼ばれ、下記のような方法で作成できます。
- こういった過激&耳障り系のジェネレーターとして、わずかにデチューンした(3つの)Saw設定のOscillatorから始めるといいでしょう。
- LFOと繋いだAllpass Filterによって、いくつかのモジュレーションを追加しながらサウンドを滑らかにします。
- Env Followerと繋いだEQ Filterは、ジェネレーターの振幅が上がるにつれて徐々にフィルターを開いていくため、音の動きを強調する効果があります。
- Wavefolderは、振幅が最大に達するとハーモニクスを与えます。Oscillatorの振幅とピッチに繋いだMeta Paramterによって、パッチのサウンドを正確に制御できます。
- 追加のDrifterは、時間の経過とともにピッチをゆっくりと変化させ、緊張感を高めます。 このパッチでも、2つのSpectral Delayを使用してステレオ化させています。
Spectral Delayモジュールは、さまざまな目的で使用できます。たとえば帯域をランダム化することで、あらゆるサウンドを粒状のテクスチャに変換できます。また、レゾネーターとして巨大な金属音を作ることもできます。本ブログでは、主に異なる設定のモジュールのペアを使用して、広がりのあるステレオ効果を生成しました(汎用性が高い設計のため、コンテキストメニューの [Import modules] コマンドからも専用のテンプレートを呼び出せます)。
映画サウンドはより抽象的であることが多く、実験の余地がたくさんあります。独自のジェネレーターと高度なモジュレーション機能を備えた GameSynth は、そのようなサウンドを設計するための理想的なツールです。今回解説した4つの例に加え、リポジトリから「Cinematic」タグで検索すれば、さらにもっと幅広いサウンドパッチが得られるでしょう。

