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Noiseモジュールで効果音を作ろう(前編)
GameSynthに搭載されている130以上のモジュールのひとつ、Noiseモジュールに焦点をあててみましょう。
GameSynthにはModularモデルで使える130以上のモジュールがありますが、その数に圧倒されることもあるでしょう。GameSynthまたはサウンド合成を始めたばかりの方は、まず一つのモジュールに焦点を合わせてみると理解が深まりやすくなります。
「ノイズ」というと、音を乱すものというイメージが強いですが、実は効果音作りにおいては、それ単体で非常にバラエティ豊かな音作りができる音源になります。
今回は、あえてNoiseモジュールのみを音源とした様々な効果音の作例を、ブログ2部構成で見ていきましょう。
はじめに
GameSynth2022より、Noiseモジュール内で下記の種類のノイズタイプを選べるようになりました。
ホワイトノイズ:全周波数一律のノイズで、減算合成でスカルプト(彫刻を掘るように音を整形)できるノイズです。
ピンクノイズ:より自然に聞こえるノイズです。海や滝などの水音に向いています。
ブラウニアンノイズ:低周波寄りで、ランブル音やルームトーンを作成するのに向いています。
ノイズは他にもカラーごとに種類が分かれていますが、効果音作成においては上記の3つが実用的です。
さらにNoiseモジュールは、内部でローパスやハイパスフィルターの機構も備えているため、必要に応じて周波数帯を調整できます。
また、生成された信号の振幅や、フィルターのカットオフ周波数を外部からコントロールするピンも備わっています。Noiseモジュールには汎用性があり、これらの調整をしながら他のモジュールと組み合わせることで、あらゆる凝ったパッチを作成していけます。
次のセクションでは、まずはNoiseモジュールのみを音源とした、いくつかのモジュールを含む効果音パッチを見ていきますが、最初は簡単なものから始まり、より複雑なデザインにしていきます。
初級編
ルームトーン
これは室内で聞こえるシンプルな自然のノイズ音で、大きすぎてもいけませんが、多くの場合において環境音のベースとなり、単純にNoiseをフィルタリングすることで実現できます。下の動画では、左右でわずかに周波数帯を変えた(約300 Hz)2つのEQ Filterに通し、ステレオチャンネルの小さな音にしています。Noiseの種類やEQ Filterの周波数を変えれば、色々な音色になります。
特徴的なアンビエンス音
前述のパッチに、ResonatorやReverbモジュールなどのプロセッサーを挟むことで「風がどこかで共鳴しているような」ユニークなアンビエンス音になります。Resonatorモジュールで、特定周波数を共鳴させることができます。wet/dry比を90%程度に設定すると、SFのような独特の空気感が生まれます。
換気扇
また、LFOで周期的なモジュレーションを作ると、換気扇のような音になります。ローパスフィルターを約110 Hzに設定して低音のみを通し、LFOの出力をNoiseの振幅に繋げます。TwoSinesシェイプを選択することで、ファンが回るようなリズムになり、追加のFormant Filterによって音にさらに偏りが生まれます。最後にLFOをモーフィングに接続することで、より音に説得力が増します。
LFOの色々なシェイプや、Formant Filterの色々な母音フィルターを組み合わせることで、色々なトーンの換気扇音が生まれてきます。
遠くのヘリコプター
Noiseモジュールの振幅の代わりにフィルターの周波数を変調することで、遠方のヘリコプターの音もシミュレートできます。ノイズのタイプはブラウニアンにし、ベル型のEQ Filterを使っています。フィルターのゲインを下げることでスペクトルに偏りが生まれ、その中心周波数がLFOによって(範囲を調整するためのMapperモジュールを介して)変調されると、ローターサウンドが生成されます。EQ (3 bands)とSpectral Delayで、距離感と空気感を調整しています。
風タイプの音
Noise音源が得意とする音のジャンルのひとつに、風系サウンドがあります。
風切り音
時間とともにフィルター周波数を素早く変えることで、リアルな短い風切り音を作成できます。Noiseモジュールを、まずレゾナンス(Q値)設定が異なる2つのバンドパスEQ Filterに通し、次にノイズの振幅を制御するEnvelopeを使用して、フィルターの周波数も変調します。この時、Mapperモジュールを使って、フィルターごとに異なる周波数帯に設定します。Envelopeの持続時間、Mapperの出力最大値、およびローパスEQ Filterの周波数(2番目のバンドパス後)にランダム幅を割り当てることで、多くの効果音バリエーションを簡単に作成できます。
魔法系の風音
信号にエフェクトプロセッサを追加することで、よりデザインされた凝った風切り音を作れます。 このパッチでは、それぞれ異なる周波数範囲に合わせた2つのNoiseモジュールを使用し、それぞれで様々なエフェクトをかけています。Flangerは動きを強調します(LFOのrate値を変えてみると色々な結果が生まれます)。Delayはより長いリリースを表現できます。 パッチの音源は並列に分岐し、それぞれの行き先でエフェクトの種類や有無を変えて、最終的にバランスよくミックスしています。 こういった魔法系風切り音は、こちらのアニメ向け風切り音ブログでも紹介しています。
Noiseモジュールを使った作例について、もっと知りたい場合は、下図のようにリポジトリウィンドウから「Search Module」ボタンを押し(またはAlt + Mキー)、Noiseモジュールを選択してみましょう。Noiseモジュールを使った作例が一覧表示されます。
布擦れ
技術的にはシンプルですが、同様の方法で、下の動画のように布すれ音も表現できます。ピンクノイズ設定にしたNoiseは、バンドパス設定のEQ Filterに送られ、その中心周波数を変調することで、布の動きを作っています。ピンクノイズ自体は布のようには聞こえないため、2つのEQ (5 bands)でサウンドを整え、摩擦音に近づけています。
この例では、Envelopeの代わりにMeta parameterを使って、フィルターと全体の振幅を制御しています。さらにDrifterモジュールを挟むことで、音の鳴り方にややランダムさを加えています。
今回は、シンプルな例を見てきました。次回は、Noiseモジュールで衝突音や環境音を作ってみましょう。